大家さんは 火災保険の値上げ 情報を要確認! 改定率や見直しポイントについて解説

実は、2023年6月に火災保険料の引き上げが発表されていたことをご存じでしょうか。改定のタイミングは、もう間もなくの2024年10月。物価高に伴って出費が増えるなか、できるだけ保険料を抑えたいと考える大家さんもいらっしゃるかと思います。

そこで今回は、いつからどれくらい値上げがされるのかに加えて、保険料の改定率や保険を見直すポイントについても解説します。

2024年に火災保険が値上げされる?

そもそも火災保険とは、万一の火災や大雨などの自然災害による損害のほか、盗難などによる損害等を補償する保険のことをいいます。

アパートなどの賃貸住宅の場合は、各戸の借主が「借家人賠償責任保険」に加入しているとはいえ、大家さんでも建物全体について火災保険に加入し、災害に対するリスクヘッジを図るのが基本。決して安くはない金額の保険料を支払っているのですから、そもそも値上げするのか、どのくらいの値上げが見込まれるか気になりますよね。

詳細を下記で解説していきます。

どのくらい値上げされる?

各種機関の発表によれば、2024年10月から火災保険料が全国平均13.0%値上げされる見込みです。

この値上げは、過去最大の引き上げ幅となっています。特に大きな値上げとなっているエリアは沖縄県で、その割合は39.5%にも達します。

なお、改定率は都道府県や建物の構造、築年数などによって異なります。

値上げに至った背景とは?

今回の火災保険料値上げの背景にあるのは、近年多発している台風やゲリラ豪雨など、「雨」にまつわる災害の増加と被害の拡大です。

大雨は家屋の浸水被害にとどまらず、河川の氾濫や下水道からの水溢れ(内水)を引き起こし、多数の建築物に損害を与えます。当然、水災の増加・拡大は保険会社の支払い額を飛躍的に増加させることとなり、保険料を引き上げざるを得ない状況になったのです。

また、コロナ禍以降に顕著となった木材や鉄骨などの価格上昇により、住宅の修復・再建コストが増加していることも値上げの要因といえるでしょう。そのほかにも、建設業界や修理業界では人材不足を原因として人件費が高騰しており、工事費用が値上がりしていることも関係しています。

水災料率の細分化による影響

さて、火災保険の値上げが主に「水災」の増加が背景にあるとお伝えしましたが、今回の料金改訂に伴って、水災補償の保険料率についても細分化されることが発表されました。

以前は水災に関しては、全国どの地域でも同じ保険料率が適用されていましたが、近年の大型台風や豪雨災害の増加により、地域ごとのリスクに応じた保険料率が適用されることになったのです。

リスクは1等地から5等地までの5段階で区分され、市区町村の単位で設定されます。たとえば、東京の新宿区なら1等地、神奈川県横浜市西区なら3等地、埼玉県さいたま市大宮区なら2等地、千葉県千葉市中央区なら2等地、といった具合です。

なお、この等地に関しては専用サイトで簡単に自分で調べることが可能です。

■水災等地検索
https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/touchi/

火災保険の改定率について

先述の通り、火災保険料は地域や築年数、建物構造、水災等地などによって異なります。この章では構造別の改定率について、損害保険料率算出機構が提示する「参考純率」をもとに、おおよその変化を解説します。

なお、実際の料金の値上げ幅については保険各社で異なりますのでご注意ください。

M構造(マンション構造)

М構造とは、耐火構造の共同住宅のことでマンション構造ともいい、一般的に柱がコンクリート造、れんが造、石造等となっています。一都三県(東京・埼玉・千葉・神奈川)でМ構造の改定率を比較すると、以下のようになります。

・東京 :+10.4%
・埼玉 :+13.3%
・千葉 :+13.1%
・神奈川:+12.0%

地域によって値上げ率に幅がありますが、東京近郊ではおおむね10%超の上昇が見込まれます。

T構造(耐火構造)

T構造とは、M構造以外の耐火構造の建物、準耐火構造の建物のことをいい、とくに耐火性能に優れた建物を指します。一般的には、レンガ造建物、コンクリートブロック造建物、コンクリート造建物などが該当します。
一都三県での改定率は次の通りです。

・東京 :+13.3%
・埼玉 :+13.2%
・千葉 :+20.9%
・神奈川:+13.6%

このようにT構造も概ね10%超の値上げですが、千葉県のみ20%を超える値上げとなっています。

H構造(M、T構造以外の建物で木造など)

H構造とは、T構造にもM構造にも該当しない住居専用の建物のことで、木造や土蔵造等が該当します。

・東京 :+6.3%
・埼玉 :+9.2%
・千葉 :+15.2%
・神奈川:+7.7%

地域によって差があることは他構造と同じですが、全体的にM構造、T構造よりも改定率は低くなっています。これは多くの住宅が非耐火の木造であることに因っており、料金の値上げによる市場へのインパクトを一定レベルに抑えるねらいです。

火災保険の見直しが必要なケースとポイントについて

では、火災保険を見直すとしたら、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。

ポイントは、ただ保険料を下げようとするのではなく、十分な補償内容を確保したうえで、無駄が無いように設計すること。保険料を気にするあまり、万一の際に補償を受けられない契約をしてしまっては本末転倒です。

火災保険の見直しが必要な場合を以下の3つに分けて見ていきましょう。

2015年頃に10年契約で火災保険に加入した場合

火災保険の保険期間は、2015年に最大36年から10年に短縮されています。

この「短縮」の直前に36年契約された方は、費用の面だけで言えば、まず見直しは不要でしょう。保険は長期一括で保険料を支払うほど割引が効くため、36年契約をされた方が今の保険料と費用を比較したところで「契約を切り替えるほうが高い」という結論になるはずです。

一方で、この「短縮」の直後に10年契約をされた方にとっては、保険料の値上がりの予定されている2024年10月は、あと1年ほどで満期を迎える時期となります。

残期間もあり、また、現在は保険期間も10年での契約はできず5年が最大となっていますが、それでも改定前料金での契約のほうがお得になる可能性もあり、火災保険を見直す選択もありそうです。

2024年10月以降に火災保険の満期を迎える場合

前項で36年契約の方は見直し不要、とお伝えしましたが、36年契約の満期が1年以内に迫っている場合は話は別です。2024年10月以降に満期を迎える場合は、改定前に見直しをおこなうことをおすすめします。

水災補償を付けている場合

前述のとおり、今回の改訂における最大の変化は「水災補償」の制度変更です。

水災リスクの高さに応じて水災補償の保険料も上がることになるため、洪水や浸水の起こる可能性の高い地域に物件をお持ちの場合には、保険料が20~30%近く上がることも考えられます。保険の満期が近く、水災リスクも高い、という場合には、料金改定前に見積もりだけでもとってみてはいかがでしょうか。

保険を見直す際のポイント

火災保険の見直しにおいて、条件や場合によっては、保険料を安くおさえることも可能です。
見直しのポイントとしては、以下の4つが挙げられます。

・保険契約の長期化を検討する
・不要な補償を外す
・免責金額を設定する
・保険会社を比べる

まず、保険は契約期間が長いほど割引率が高く、保険料が安くなります。あまりいらっしゃらないとは思いますが、単年契約をされている方は複数年一括の契約をご検討ください。

また、損害に対して一定額までの自己負担金額(免責金額)を設定すると、一般に保険料は安くなります。主に風災等の補償においては免責の採用を検討できるでしょう。

しかし、見直しをする際にもっとも重視すべきは、「保険の内容」です。物件の購入が10年・20年と前の場合には、現在の気候や災害リスクとまったく合致しない保険内容で契約をしている可能性もあるでしょう。

水災補償をつけている場合には値上がり注意、と述べましたが、一方で「かつては水災リスクを気にせず済む地域と考えていたが、昨今は豪雨被害が心配だ」という地域も増えています。この機会に水災補償を追加することも検討してみてください。

まとめ

2024年10月から火災保険料が値上げされる見込みで、この背景には自然災害の増加、建築コストの上昇、人件費の高騰などがあります。

また、水災補償の料率の細分化や建物構造で区分されることで、地域や建物の種類によって値上げ率が異なります。

なお、火災保険を見直す際には「保険契約の長期化を検討する」「不要な補償を外す」「免責金額を設定する」「保険会社を比べる」ことなどをポイントに考えましょう。

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