第123回 男女平等とはどういうことか?女性の社会進出

固定概念が職場での活躍阻む

会社や経営者の偏見ないか自己検証

働き手として必要な人材 幹部登用はまだ一部

ここのところ、人手不足時代の労働生産性の向上について書いてきたが、今回は女性の社会進出について書きたい。

私の世代(1961年生まれ)では、男女機会均等法施行(1986年)以前でもあり、多くの女性の同級生たちは、結構レベルの高い大学を出て大企業に勤めていたとしても結婚を機に退職をしたものだ。

最近になって会う機会があって、いま、何をしてるの?と尋ねても、うーん、ボランティア、とか言っている。

働かないの?というと、フルで働くのは嫌、とか言う。どう生きるかは本人のまったく自由だが、正直もったいないなあと思う。

うちの会社に来て働いてくれないかな、と思うのだ。

 

その点、今の若い世代はほとんどが「共働き」を希望しているのではないか。

弊社もこの4月から育休を終えた2名の女性社員が復帰する。これで育休後の復帰は5人になる。

ダブルインカムのほうが世帯年収が多くなるし、合理的に考えればそのほうがいいのは当然だろう。

あとは、前回の連載に書いたように、男性が育児・家事に協力する体制があるか、つまり、残業せずに早く帰宅できるのか、が問題なのだ。

残業せずに売上と利益を確保する労働生産性の向上が、少子化を食い止め、また女性の就業を可能にするのだ。

 

高齢化の負担増が懸念され人手不足の時代に、一人でも多くの働き手が必要ないま、家計と税金から巨額の教育投資をつぎ込んだ女性が外で働かないという現実は、とても「もったいない」ことではないか。

この20年で男女を問わず20代の若い世代は3分の1減っているのだ。

人材確保のためには、「女性」「シニア世代」「外国人」を今後は積極的に雇用する手法を取ることになる。

ぜひ、女性の社会進出を応援したいし、男性と同じように働き出世してほしいと思う。

しかし、たとえば弊社においての現状はマネージャークラス9人中、女性は1人だけだ。

2003年に「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも、30%程度になるよう期待する」といった目標も政府から示されていたが、現実には意思決定層(管理職以上)に占める女性の割合は7.5%に過ぎず、国際的にみて低い水準のままである。

正社員の給与水準も女性は男性より29%も低い。

これはOECD(経済協力開発機構)諸国の平均16%を大きく下回っている。

2015年には、所謂「女性活躍推進法」が施行され、2016年4月からは、301人以上の雇用をしている企業は、女性活躍の状況を把握したうえで、外部に公表する義務を負うことになった。

だが、日本の政治経済の指導層には、まだまだ伝統的家族観が根強く残っているのではないか。

「目立つと嫌われる」の声 性の印象さが生む不平等

最近、シェリル・サンドバーグ女史の「リーン・イン/LEAN IN」という本を読んだ。

彼女はフィスブックの最高執行責任者/COOであり、この本は全世界で150万部も読まれ、日本でも10万部が発売されたとのこと。

「LEAN IN」とは「一歩踏み出そう」という意味で、女性が男性と同じようにもっと社会で成功出来るようにとの思いで書かれた本だ。

女性が皆リーダーを目指す必要ない。

しかし、それは男性も同じで、少なくとも平等な機会を与えられて、おなじように女性でも頑張る人がいてもいいではないかと確かに私も思う。

 

彼女は「真の男女平等とは、国家元首と企業経営者の概ね半分は女性で、世帯の概ね半分では男性が家事・育児を担当していることだろう」という。

男性と女性では、役割も特性も違うとは思うが、言っていることは至極正論ではある。

しかし、弊社のちいさな限られた空間でも感じるのだが、女性社員はほとんど野心を持っていないように思う。

真面目で仕事もできるのだが、それほど「上」を目指していないように思えるのだ。それは本当なのだろうか。

著書の中で、彼女は、それは目立つと女性は嫌われるのを知っているから、野心を持たないようにしているのだ、と言っている。

多くの場で、女性ははっきり意見を言わないのだ。

著書の中で、彼女は、それは目立つと女性は嫌われるのを知っているから、野心を持たないようにしているのだ、と言っている。

多くの場で、女性ははっきり意見を言わないのだ。出来る女は嫌われると。

 

著作のなかで、コロンビア大学のフランク・フリン教授の2003年に行われた実験に触れている。

実在の女性起業家のケースを取り上げ、学生に読ませたのである。

ケースでは、どう成功したのかが説明されており、「強烈な個性の持ち主で・・・ハイテク分野の著名な経営者にも顔が広かった。

こうした幅広い人脈を活用して成功した」とある。

実験では、学生を2つのグループに分け、第1グループにはこのケースをそのまま読ませ、第2グループには、主役の名前を変えて読ませたのである。

つまり、女性名でなく男性名に変えたのだ。そして、この主役から受けた印象を述べてもらったのだ。

結果、能力面では、学生たちは、2人の能力に対して同じように敬意を払ったのだが、男性名のほうを好ましい同僚として評価したらしい。

女性名のほうは自己主張が激しくて自分勝手で、「一緒に働きたくない」「自分が経営者だったら採用しない」人物とみなしたのだ。

情報はそっくり同じで、違うのは性別だけである。それなのに、これほど違う印象が生まれてしまったのだ。

世の中はこのような偏見(バイアス)に満ちているのだ。アメリカでさえ、である。

男性は、一家の大黒柱であり、決断力があり、リーダーシップをとるものだ。

女性は、家事・育児をして、こまやかで献身的な存在だ、とかいうふうに性格付けをされている。

仕事で成功するための様々な資質はすべて男性の特性とみなされる傾向にあるのだ。

 

かなりショッキングな実験結果だが、これが現実かもしれない。

我々はもっと頭を柔軟に、フェアに生きなければいけない。

自分が知らず知らずに一定のバイアスをもって人を評価していないか、気をつけなければいけないのだ。

固定観念にとらわれていないか、自分と会社を検証する必要がある。

男性が育休を取ることに消極的であることもおかしなことだ。

正直にいうと私自身も女性に対して、男性に比べて「視野が狭いのではないか」、「感情的になりやすい」のではないか、という「疑念」を持っている。

また役割が違うのだ、という言葉で性差を片付けてはいまいか。

しかし、女性陣がもっと活躍できるような場を精神的にも制度的にも作るのが、現代の経営者の役目だと強く思う。

育児しながら働くシェアオフィスに期待

弊社の女性社員のなかには、ご主人を扶養家族にしている人もいる。

彼はうちの元社員だが、今は家で「主夫」をしており、家事一切を担当し、女性社員の送り迎えもやっている。

それもいいではないか。この女性社員にももっと出世してほしいと私は思っている。

 

最近では、子供を持つ女性の助けになるような仕組みもいろいろ出てきているのはいいことだ。

子供を連れてきていいコワーキングスペース(シェアオフィス)が出来たり、会社で子連れ出勤を可にするような動きもあるようだ。

パートナーの体調不良等、子供の預け先が確保できず、会社を休まざるを得ない場合に、子供と共に出勤して仕事をする制度らしい。素晴らしいではないか。

保育士や見守りスタッフがいるわけではないそうだ。うちの会社でもやろうかなと思う。

藤澤 雅義(Mark藤澤)

アートアベニューの代表取締役であると同時に、全国の賃貸管理会社を支援するコンサル企業:オーナーズエージェント株式会社の代表取締役も務める。

しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。

あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。